こんにちは。
名古屋栄・久屋大通のパーソナルトレーニングジム ORCA PERSONAL GYMの 伊藤 ( @orca_coach ) です。
こちらの記事では、女性ランナーに多い膝の痛みの原因と、痛みを防ぐトレーニングについて、研究をもとに解説していきます。
マラソンに向けて走る距離を増やしたら、膝のお皿のまわりや外側が痛くなってきました。
女性は膝を痛めやすいと聞きますが、どうすれば防げますか?
以上のように、膝の痛みに悩む女性ランナーの方のご質問にお答えします。
先に結論をお伝えすると、女性ランナーに多い膝の痛みは、「骨盤が広いから」という体の形よりも、走り方や練習量の増やし方、食事の不足が関係していることがわかってきました。研究からは、股関節とひざまわりの筋トレ、ピッチ(歩数)を少し上げる走り方、長い距離を急に増やさないことが有効だと考えられます。
女性ランナーに多い2つの膝の痛み

ランナー膝(膝蓋大腿部痛症候群)
膝のお皿のまわりや裏側が痛む「膝蓋大腿部痛症候群(PFP)」は、ランナーに多い膝の痛みです。1525人を最長2.5年追跡した研究では、女性は男性の約2.2倍、この痛みが起こりやすいことがわかりました(Boling et al., 2010)。
腸脛靭帯炎(膝の外側の痛み)
膝の外側が痛む「腸脛靭帯炎(ITBS)」も、女性ランナーは男性の約2倍起こりやすいとされています(Foch et al., 2023)。
一方で、ランニングのケガ全体で見ると、女性の方がケガをしやすいとは言えず、むしろ男性よりリスクが低いという報告もあります(van der Worp et al., 2015)。女性は「膝の前と外側の痛み」に特に注意が必要、と覚えておくとよいでしょう。
「骨盤が広いから膝を痛める」は誤解?
「女性は骨盤が広く、Q角(太ももとすねの角度)が大きいから膝を痛めやすい」という話をよく耳にします。しかし、18の追跡研究・4818人をまとめた報告では、Q角、年齢、身長、体重、BMI、体脂肪率は、ランナー膝のリスクとは関係がないという結果でした。「股関節の筋力が弱いと発症する」という点も、追跡研究では支持されませんでした(Neal et al., 2019)。
では、何が関係しているのでしょうか。4543人を追跡した研究では、女性の場合、着地の瞬間に脚が外に開いていない(股関節の外転が10°未満)、膝が内側にねじれるといった動きが、ランナー膝のリスクを高めていました。この研究でもQ角は関係していませんでした(Boling et al., 2021)。
膝を痛めたランナーの走り方を男女で比べた研究でも、女性は股関節が内側に入り、内側にねじれやすい一方で、膝そのものの角度(いわゆる膝が内側に入る動き)には男女差がありませんでした(Tamer et al., 2026)。膝の痛みは、膝だけでなく「股関節の動き」から考えることが大切です。
また、ランナー膝のある人は、ない人に比べてピッチ(1分間の歩数)が少なく、歩幅が短く、骨盤が左右に傾きやすいことがわかっています(Bazett-Jones et al., 2023)。ただし、これが痛みの原因なのか、痛みの結果なのかはまだはっきりしていません。
長い距離を「1回で」急に増やさない
5205人のランナーのGPSウォッチのデータを分析した研究では、直近30日でいちばん長く走った距離を、1回のランで10〜30%超えると、使いすぎによるケガのリスクが約1.6倍になりました。100%以上超えた場合は約2.3倍でした。一方で、よく言われる「週の走行距離の増やし方」とケガとの間には関係が見られませんでした(Frandsen et al., 2025)。
マラソンに向けて距離を伸ばすときは、週の合計よりも、「1回のロング走を、これまでの最長距離から少しずつ伸ばす」ことを意識しましょう。
食事が足りないと、骨のケガが増える
女性ランナーが特に気をつけたいのが、エネルギー(食事)の不足です。アスリート6118人をまとめた報告では、女性の44.2%がエネルギー不足の状態にあり、多くの研究で骨の健康の低下や疲労骨折のリスク増加が見られました(Gallant et al., 2025)。
大学の女子ランナーを最長5年追跡した研究では、エネルギー不足・月経の乱れ・骨密度の低さなどのリスクが高い選手は、低い選手に比べて疲労骨折のリスクが2.9〜4.4倍でした(Roche et al., 2023)。また、ケガをした女性ランナーは、ケガをしていない人より1日の摂取エネルギーが約303kcal少ないこともわかっています(Colebatch et al., 2025)。
体重を落とすために食事を減らしながら走る量を増やすのは、ケガのもとです。走る量が増える時期ほど、しっかり食べることを優先しましょう。
膝の痛みを防ぐ・改善するトレーニング
ランナー膝の対応をまとめた国際的な指針では、65の質の高い研究をもとに、ひざまわりの運動を中心に、必要に応じて股関節の運動を組み合わせることが第一の方法として推奨されています(Neal et al., 2024)。
ほぼ女性(96.3%)を対象にした研究のまとめでは、股関節と膝の両方を鍛えた方が、膝だけを鍛えるより痛みと機能が改善しました(Halabi et al., 2025)。12の研究・1066人のまとめでも、股関節の筋トレ・膝の筋トレのどちらも痛みを減らし、股関節の筋トレでお尻の横と外側をねじる筋力が向上していました(Zhang et al., 2025)。
先ほど「股関節の弱さは発症の原因とは言えない」とお伝えしましたが、鍛えると痛みの改善に役立つことは研究で示されています。ここからは、週2〜3回取り入れたいメニューを紹介します。
① スクワット(太もも前の筋力)

足を肩幅に開き、お尻を後ろに引きながら、痛みのない深さまでしゃがみます。膝がつま先と同じ方向を向くように意識しましょう。10回×3セット。
② ヒップリフト(お尻の筋力)

仰向けで膝を立て、かかとで床を押してお尻を持ち上げます。肩から膝まで一直線になったところで1秒止めます。10回×3セット。慣れたら片脚で行います。
③ サイドレッグレイズ(お尻の横の筋力)
横向きに寝て、上の脚を少し後ろに引いた位置から、つま先を正面に向けたまま斜め上に持ち上げます。お尻の横(中殿筋)に効いているのを感じながら、15回×2〜3セット。
④ ステップダウン(着地の動き)
15〜20cmの台に片脚で立ち、反対の脚をゆっくり床に下ろします。膝が内側に入らないよう、骨盤を水平に保ったまま行います。左右10回×2セット。
① 股関節と膝の筋トレを週2〜3回
② ピッチを5〜10%上げてみる
③ 1回のロング走を急に伸ばさない
④ 走る量が増える時期ほど、しっかり食べる
走り方の工夫:ピッチを5〜10%上げる
ランナー45人の研究では、ピッチを5%上げると膝の負担が減り、10%上げると股関節が内側に入る動きも小さくなることがわかりました。反対に、ピッチを10%下げると、すべての関節の負担が大きく増えていました(Heiderscheit et al., 2011)。
ピッチを上げると、着地の衝撃(負荷のかかる速さ)が減ることは多くの研究で確認されています(Doyle et al., 2022; Anderson et al., 2022)。ただし、ケガや痛みそのものが減るかどうかは、まだ研究が少ないのが現状です。いきなり大きく変えず、メトロノームアプリなどを使って、今のピッチから5%程度上げるところから試してみましょう。
走るたびに痛みが強くなる、腫れや熱がある、歩くだけでも痛いといった場合は、無理をせず整形外科を受診してください。痛みがある時期は、走る量を減らしながら筋トレを続けるのがおすすめです。
よくある質問
Q. 膝が痛いときは、走るのをやめた方がいいですか?
痛みが強い場合や歩くのもつらい場合は、走るのを休んで整形外科を受診してください。軽い痛みであれば、距離やスピードを落とし、股関節と膝の筋トレを続けながら様子を見るのが一般的です。
Q. インソール(中敷き)は効果がありますか?
ランナー膝の国際的な指針では、市販のインソールは、筋トレを中心とした運動に加える「補助的な方法」の一つとして挙げられています。合う・合わないには個人差があります。
Q. ピッチはどれくらい上げればいいですか?
研究では、今のピッチから5〜10%上げると膝や股関節の負担が減ることが示されています。まずは5%程度から試し、違和感がなければ少しずつ慣らしていきましょう。
本記事のまとめ
女性ランナーに多い膝の痛み(ランナー膝・腸脛靭帯炎)は、骨盤の広さよりも、股関節の動き、練習量の増やし方、食事の不足と関係していることが研究からわかってきました。
股関節と膝の筋トレを週2〜3回、ピッチを少し上げて、ロング走は少しずつ。走る量が増える時期ほどしっかり食べて、ケガなくゴールを目指しましょう。
ORCA PERSONAL GYMでは、マラソンに取り組む女性ランナーの方の膝の痛みの予防や、走りに必要な筋力づくりを、完全個室でマンツーマン指導しています。マラソン・トライアスロンなど持久系スポーツのトレーニングについては、持久系スポーツのパーソナルトレーニングのページもご覧ください。ランニングの膝の痛み全般については、ランニングで膝が痛い原因の記事でも解説しています。
この記事が少しでもお役に立てたら幸いです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
- Anderson LM, et al. Sports Med Open. 2022;8(1):112. doi:10.1186/s40798-022-00504-0
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- van der Worp MP, et al. PLoS One. 2015;10(2):e0114937. doi:10.1371/journal.pone.0114937
