こんにちは。
名古屋栄・久屋大通のパーソナルトレーニングジム ORCA PERSONAL GYMの 伊藤 ( @orca_coach ) です。
こちらの記事では、ランニング前のストレッチは必要か、そしてレース前の正しいウォーミングアップのやり方について、研究をもとに解説していきます。
走る前は毎回、じっくり時間をかけて静的ストレッチをしています。
ケガの予防になると思っていたのですが、マラソンの前にはやらない方がいいと聞きました。本当ですか?
以上のように、ランニング前のストレッチに迷っているランナーの方のご質問にお答えします。
先に結論をお伝えすると、ランニング前の静的ストレッチに、ケガの予防効果はほとんどないことが研究でわかっています。また、長い時間の静的ストレッチは、直後の走りのパフォーマンスを下げる可能性があります。走る前は、軽いジョグ → 動的ストレッチ(ドリル) → 短いダッシュの流れがおすすめです。
ストレッチでケガは防げる?

軍の新兵1538人を対象にした研究では、ウォーミングアップに静的ストレッチを加えても、ケガの発生はストレッチをしなかったグループとほとんど変わりませんでした(Pope et al., 2000)。
25の研究・2万6千人以上をまとめた報告でも、ストレッチには予防効果がなく、筋トレではケガのリスクが3分の1以下、使いすぎによるケガがほぼ半分に減っていました(Lauersen et al., 2014)。60の研究のまとめでも、ストレッチは効果がなく、トレーニングプログラムなどが有効でした(Leppänen et al., 2014)。
ただし、2377人を対象にした研究では、運動の前後に30秒の静的ストレッチを行ったグループで、ケガ全体は減らなかったものの、筋肉・腱のケガと、気になる筋肉痛は少なかったという結果もあります(Jamtvedt et al., 2010)。ストレッチが無意味というわけではなく、「ケガ予防の主役ではない」と考えるのがよいでしょう。
走る前の静的ストレッチは、パフォーマンスを下げる?
研究のまとめでは、運動の直前に行うと、静的ストレッチでパフォーマンスが平均3.7%低下し、動的ストレッチでは1.3%向上していました。静的ストレッチでも、1か所60秒未満なら低下は1.1%と小さいものでした(Behm et al., 2016)。106の研究のまとめでも、1か所30秒未満の静的ストレッチなら、ほとんど影響はないとされています(Kay & Blazevich, 2012)。
ランニングの研究では、走る前に16分間の静的ストレッチを行うと、30分間で走れた距離が6.0kmから5.8kmに減りました(Wilson et al., 2010)。別の研究でも、静的ストレッチの後は1マイル(約1.6km)の上り坂走のタイムが遅くなり、地面に足が着いている時間が長くなっていました(Lowery et al., 2014)。
一方で、短い静的ストレッチではランニングエコノミー(走りの効率)は変わらなかったという研究もあります(Hayes & Walker, 2007; Mojock et al., 2011)。研究のまとめでは、静的ストレッチだけをウォーミングアップにするのは避けるべきとされています(Simic et al., 2013)。
ストレッチの後の筋肉痛は防げる?
「走った後にストレッチをすれば筋肉痛にならない」とよく言われますが、研究のまとめでは、運動の前後にストレッチをしても、翌日の筋肉痛は100点満点で約1点しか減らないという結果でした(Herbert et al., 2011)。走った後のストレッチは、リラックスや柔軟性を保つ目的で行いましょう。
ランナーにおすすめのウォーミングアップ
ウォーミングアップ全体については、5つの質の高い研究のうち3つでケガの減少が見られ、ケガを減らす方向の結果が多いとされています(Fradkin et al., 2006)。
① 軽いジョグ(5〜10分)
会話ができるくらいのゆっくりしたペースで走り、体温と筋肉の温度を上げます。
② 動的ストレッチ・ドリル(3〜5分)
脚を前後・左右に振るレッグスイング、もも上げ、お尻を蹴るドリル、歩きながらのランジなど、動きながら筋肉と関節を動かす運動を行います。
③ 短いダッシュ(流し)
研究では、短い上り坂ダッシュ(6秒×6本)を入れたウォーミングアップの方が、ジョグだけの場合より高い強度で長く走れました(González-Mohíno et al., 2018)。中距離ランナーの研究でも、ジョグとドリルの後に短いダッシュを入れることで、800mのタイムが向上していました(Ingham et al., 2013)。
ただし、これらはトレーニングを積んだランナーの短い距離での研究です。フルマラソンの前は、軽めのダッシュを数本にとどめ、疲れを残さないようにしましょう。
① 軽いジョグ 5〜10分
② 動的ストレッチ・ドリル 3〜5分
③ 短いダッシュ(流し)を数本
④ 静的ストレッチをしたい場合は、1か所30秒未満にして、その後に動く
ケガ予防の主役は「筋トレ」
ストレッチよりもケガの予防効果がはっきりしているのが筋トレです(Lauersen et al., 2014)。週2回ほど、スクワットやヒップリフト、カーフレイズなどの筋トレを取り入れましょう。

よくある質問
Q. ランニング前の静的ストレッチはしない方がいいですか?
1か所60秒以上の長い静的ストレッチは、直後のパフォーマンスを下げる可能性があります。行う場合は1か所30秒未満にして、その後に動的ストレッチやジョグを行いましょう。
Q. ストレッチでケガは予防できますか?
多くの研究で、ストレッチにはケガ全体の予防効果がほとんど見られませんでした。ケガ予防には筋トレの方が効果的です。
Q. マラソン前のウォーミングアップはどうすればいいですか?
軽いジョグ、動的ストレッチ・ドリル、短いダッシュの流れがおすすめです。フルマラソンの前は、疲れを残さないよう軽めにしましょう。
本記事のまとめ
ランニング前の静的ストレッチは、ケガ予防の効果が小さく、長く行うとパフォーマンスを下げる可能性があります。走る前は軽いジョグと動的ストレッチ・ドリルで体を温め、ケガの予防は筋トレで行いましょう。
ORCA PERSONAL GYMでは、フルマラソン・ハーフマラソンに取り組むランナーの方の筋力トレーニングを、練習やレースの予定に合わせて完全個室・マンツーマンで指導しています。詳しくはマラソン・ランニングのパーソナルトレーニングのページをご覧ください。ランナーにおすすめの筋トレはマラソンの後半に失速しないための筋トレ、40代以降の方は40代・50代ランナーの筋トレの記事でも解説しています。
この記事が少しでもお役に立てたら幸いです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
- Behm DG, et al. Appl Physiol Nutr Metab. 2016;41(1):1-11. doi:10.1139/apnm-2015-0235
- Fradkin AJ, et al. J Sci Med Sport. 2006;9(3):214-220. doi:10.1016/j.jsams.2006.03.026
- González-Mohíno F, et al. Int J Sports Med. 2018;39(6):426-432. doi:10.1055/s-0044-102132
- Hayes PR, Walker A. J Strength Cond Res. 2007;21(4):1227-1232. doi:10.1519/R-19545.1
- Herbert RD, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2011;(7):CD004577. doi:10.1002/14651858.CD004577.pub3
- Ingham SA, et al. Int J Sports Physiol Perform. 2013;8(1):77-83. doi:10.1123/ijspp.8.1.77
- Jamtvedt G, et al. Br J Sports Med. 2010;44(14):1002-1009. doi:10.1136/bjsm.2009.062232
- Kay AD, Blazevich AJ. Med Sci Sports Exerc. 2012;44(1):154-164. doi:10.1249/MSS.0b013e318225cb27
- Lauersen JB, et al. Br J Sports Med. 2014;48(11):871-877. doi:10.1136/bjsports-2013-092538
- Leppänen M, et al. Sports Med. 2014;44(4):473-486. doi:10.1007/s40279-013-0136-8
- Lowery RP, et al. J Strength Cond Res. 2014;28(1):161-167. doi:10.1519/JSC.0b013e3182956461
- Mojock CD, et al. J Strength Cond Res. 2011;25(8):2170-2176. doi:10.1519/JSC.0b013e3181e859db
- Pope RP, et al. Med Sci Sports Exerc. 2000;32(2):271-277. doi:10.1097/00005768-200002000-00004
- Simic L, et al. Scand J Med Sci Sports. 2013;23(2):131-148. doi:10.1111/j.1600-0838.2012.01444.x
- Wilson JM, et al. J Strength Cond Res. 2010;24(9):2274-2279. doi:10.1519/JSC.0b013e3181b22ad6
