こんにちは。
名古屋栄・久屋大通のパーソナルトレーニングジム ORCA PERSONAL GYMの 伊藤 ( @orca_coach ) です。
こちらの記事では、フィギュアスケートで多いケガと、柔軟性を高めながらケガを防ぐための方法について、研究をもとに解説していきます。
子供がフィギュアスケートをしていて、最近腰やかかとを痛がります。
柔軟性は大切だと思いますが、ストレッチはどのようにすればいいですか?
以上のように、フィギュアスケートに取り組むお子さまの保護者の方のご質問にお答えします。
先に結論をお伝えすると、フィギュアスケートでは使いすぎによるケガ(疲労骨折・膝・腰・かかと)が多く、練習量・食事・柔軟性・靴の合い方が関係していることが研究でわかっています。ストレッチは、練習前は短く・動きながら、長くじっくり伸ばすのは練習後が基本です。
フィギュアスケートに多いケガ

ジュニアの国際大会レベルの選手469人を調べた研究では、女子の42.8%、男子の45.5%に使いすぎによる障害がありました。女子シングルで最も多かったのは疲労骨折(19.8%)、次がジャンパー膝(14.9%)で、男子シングルではジャンパー膝(16.1%)とオスグッド病(14.2%)が多く見られました(Dubravcic-Simunjak et al., 2003)。
平均12.9歳の女子スケーター137人の研究では、1年間で31%が3週間以上練習を休む大きなケガをしており、部位は膝(25%)、足首(20%)、股関節・足の付け根(15%)の順でした(Jederström et al., 2021)。
ノービスからオリンピックレベルまでの164人の研究では、24.4%が競技人生で疲労骨折を経験しており、すねと足首に多く見られました(Naylor et al., 2023)。
ケガのリスクを高める要因
29の研究・4202人をまとめた報告では、ケガのリスクを高める要因として、年齢が上がること、過去の疲労骨折、週12回を超える練習、食事を抜くこと、エネルギー不足、太もも前後の筋肉の硬さ、氷上練習時間の多さ、靴と足の長さの差などが挙げられています(Schmidt et al., 2025)。
疲労骨折の研究でも、週12回以上練習している選手は疲労骨折の経験が約2倍(33.3%対17.8%)でした(Naylor et al., 2023)。女子スケーター132人の研究では、年齢が上がるほど腰のケガのリスクが高まり、練習を積み重ねる影響が考えられています(Sugimoto et al., 2021)。食事を抜く回数が多いほど大きなケガが増えるという報告もあり(Jederström et al., 2021)、体重を気にして食事を減らすのは逆効果です。
10代の腰痛には要注意
10代のアスリートの研究をまとめた報告では、1年間で42%が腰痛を経験しており、練習量や強度が多いこと、年齢が上がること、女子であることがリスクとして挙げられています。原因として最も多く報告されていたのが、腰の骨の疲労骨折(腰椎分離症)でした(Wall et al., 2022)。体を大きく反らす動きの多いフィギュアスケートでは、特に注意が必要です。
柔軟性は大切。でも「やりすぎ」にも注意
先ほどの研究のまとめでも、太ももの前(大腿四頭筋)と裏(ハムストリングス)の硬さはケガのリスクとされています(Schmidt et al., 2025)。国際大会レベルのジュニア選手の研究でも、骨の成長に筋肉や腱の成長が追いつかない成長期には特に、姿勢・柔軟性・筋力のプログラムが勧められています(Dubravcic-Simunjak et al., 2003)。
一方で、フィギュアスケートやバレエ、体操など柔軟性が求められる競技の選手は、股関節の痛み(関節唇やまわりの軟骨の損傷など)が起きやすいことも報告されています(Bolia et al., 2018)。股関節の手術を受けた選手を比べた研究では、柔軟性競技の選手の方が軟骨の損傷や靭帯の断裂が多く見られました(Saks et al., 2022)。関節を限界まで伸ばし続けるのではなく、「動かせる範囲で筋力を発揮できる柔軟性」を目指すことが大切です。
ジャンプ前のストレッチは「短く・動的に」
ストレッチと運動パフォーマンスの研究をまとめた報告では、運動の直前に行うと、じっと伸ばす静的ストレッチでパフォーマンスが平均3.7%低下し、動きながら伸ばす動的ストレッチでは1.3%向上していました。静的ストレッチでも、1か所60秒未満なら低下は1.1%と小さいものでした(Behm et al., 2016)。
106の研究をまとめた別の報告でも、1か所30秒未満の静的ストレッチなら、パフォーマンスへの悪影響はないとされています(Kay & Blazevich, 2012)。ジャンプ練習の前は、短い静的ストレッチと動的ストレッチを組み合わせ、柔軟性を高めるための長いストレッチは、練習後やお風呂上がりに行いましょう。
靴(ブーツ)の合い方も見直そう

スケーター95人の研究では、サイズの合ったブーツを履いていたのは32%だけでした。かかとの奥の滑液包炎が34%、かかとのタコが29%に見られ、靴の中で足首を十分に曲げられない選手が約半数いました。靴と足の長さの差が大きいほど、かかとのトラブルが多くなっていました(Campanelli et al., 2015)。成長期は足のサイズもすぐに変わるため、こまめに確認しましょう。
ケガを防ぐ陸上トレーニング
子供・10代のスポーツの研究をまとめた報告では、バランスや着地、筋力を組み合わせた神経筋トレーニングで、脚のケガのリスクが約36%減少しました(Emery et al., 2015)。週2〜3回、氷上練習の前後に取り入れてみましょう。
① 動的ストレッチ(練習前)
脚を前後・左右に大きく振るレッグスイング、股関節を回す運動、ランジで前に歩きながら体をひねる運動などを、各10回ほど行います。
② ヒップリフト(お尻と体幹)

仰向けで膝を立て、かかとで床を押してお尻を持ち上げます。腰を反らせすぎず、お尻の力で持ち上げるのがポイントです。10回×3セット。
③ 片脚バランス(着氷の安定)
片脚で立ち、ランディングの姿勢をつくって30秒キープします。慣れたら目を閉じたり、クッションの上で行ったりして難しくします。左右2〜3回。
④ サイドプランク(体幹の横)
横向きで肘をつき、頭から足まで一直線にして体を持ち上げます。腰を反らさずに体を支える力をつけます。左右20〜30秒×2セット。
⑤ 太もも前・裏のストレッチ(練習後)
練習後は、太ももの前と裏、ふくらはぎ、お尻を、1か所30〜60秒ずつゆっくり伸ばします。痛みが出るほど強く伸ばす必要はありません。
① 練習前は短い静的ストレッチ+動的ストレッチ
② 長いストレッチは練習後・お風呂上がり
③ 筋力・バランスの陸上トレーニングを週2〜3回
④ 食事を抜かない、靴のサイズをこまめに確認
体を反らしたときに腰が痛む場合は、腰椎分離症(腰の骨の疲労骨折)の可能性があります。かかとや膝、股関節の痛みが続く場合も含め、早めに整形外科を受診してください。成長期の膝の痛みについては、オスグッド・シュラッター病の記事も参考にしてください。
よくある質問
Q. ストレッチは毎日した方がいいですか?
柔軟性を保つために、練習後やお風呂上がりの時間を使って、毎日少しずつ行うのがおすすめです。ジャンプ練習の直前は、長くじっと伸ばすストレッチは避け、短い静的ストレッチと動的ストレッチにしましょう。
Q. 体が硬い子は、ケガをしやすいですか?
研究では、太ももの前や裏の硬さがケガのリスクとして挙げられています。ただし、関節を限界まで伸ばすことより、動かせる範囲で筋力を発揮できることが大切です。
Q. 腰が痛いのに練習を続けても大丈夫ですか?
体を反らすと痛む腰痛は、腰椎分離症の可能性があります。無理をせず、早めに整形外科を受診してください。
本記事のまとめ
フィギュアスケートでは、疲労骨折、膝、腰、かかとなど、使いすぎによるケガが多いことがわかっています。練習量、食事、柔軟性、靴の合い方が、ケガのリスクに関わっています。
練習前は短く・動的に、長いストレッチは練習後に。筋力とバランスの陸上トレーニングを組み合わせて、ケガなく長く競技を続けられるカラダをつくっていきましょう。
ORCA PERSONAL GYMでは、フィギュアスケートに取り組むお子さまの陸上トレーニングを、成長や体の状態に合わせてマンツーマンで指導しています。ジャンプ力を上げるトレーニングについては、フィギュアスケートのジャンプ力を上げるトレーニングの記事で解説しています。
この記事が少しでもお役に立てたら幸いです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
- Behm DG, et al. Appl Physiol Nutr Metab. 2016;41(1):1-11. doi:10.1139/apnm-2015-0235
- Bolia I, et al. Clin J Sport Med. 2018;28(1):82-90. doi:10.1097/JSM.0000000000000440
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- Dubravcic-Simunjak S, et al. Am J Sports Med. 2003;31(4):511-517. doi:10.1177/03635465030310040601
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