こんにちは。
名古屋栄・久屋大通のパーソナルトレーニングジム ORCA PERSONAL GYMの 伊藤 ( @orca_coach ) です。
こちらの記事では、ランニングのピッチ(ケイデンス)を上げると膝の負担が減るのか、そして正しいピッチの上げ方について、研究をもとに解説していきます。
走ると膝のお皿のまわりが痛くなります。
「ピッチは180歩が理想」と聞きましたが、本当にそこまで上げた方がいいですか?
以上のように、膝の痛みやフォームに悩むランナーの方のご質問にお答えします。
先に結論をお伝えすると、今のピッチから5〜10%上げると、1歩ごとの膝の負担が減ることが研究でわかっています。一方で、「誰でも180歩が理想」という根拠はなく、目安は「今の自分のピッチ」を基準に考えることが大切です。
ピッチ(ケイデンス)とは?

ピッチ(ケイデンス)とは、1分間に地面に足が着く回数(歩数)のことです。同じ速さで走る場合、ピッチを上げると1歩の歩幅は小さくなります。
ピッチを上げると膝の負担が減る
市民ランナー45人を対象にした研究では、同じ速さのままピッチを5%・10%上げると、膝が吸収する衝撃のエネルギーが減少しました。歩幅、体の上下動、着地のブレーキも小さくなっていました。反対に、ピッチを10%下げると、すべての関節の負担が大きく増えていました(Heiderscheit et al., 2011)。
別の研究では、ピッチを10%上げると、膝のお皿の裏(膝蓋大腿関節)にかかる最大の力が14%減少しました(Lenhart et al., 2014)。ピッチを7.5%上げた研究でも、膝のお皿の裏にかかる力は、1歩あたりだけでなく1kmあたりの合計でも減っていました(Willy et al., 2016a)。
37の研究をまとめた報告でも、ピッチを上げると、着地での膝の曲がり、歩幅、股関節が内側に入る動き、膝のお皿の裏の負担が減ることが示されています(Anderson et al., 2022)。
ただし「膝全体の負担」が必ず減るわけではない
ピッチを7.5%上げた研究では、膝の主な関節にかかる力は1歩あたりで約8〜11%減りました。しかし、歩数が増える分、1kmあたりの合計の負担は変わりませんでした(Willy et al., 2016c)。「膝のお皿まわりの負担は減りやすいが、膝全体の負担が必ず減るわけではない」と理解しておきましょう。
「ピッチ180歩が理想」は本当?
100kmの世界選手権に出場したトップ選手でも、ピッチは1分間に約155〜203歩と大きな差がありました。ピッチは走る速さが上がるほど多く、身長が高いほど少なくなる傾向がありました(Burns et al., 2019)。
エネルギー的に最も効率の良いピッチを調べた研究でも、平均は約170歩/分で、個人差がありました(Lieberman et al., 2015)。ただし、自分で選んでいるピッチは、最も効率の良いピッチより少し低い傾向があり、特に初心者ほどその差が大きいことがわかっています(de Ruiter et al., 2014)。
つまり、「180歩」という数字を目標にするのではなく、今の自分のピッチから少しだけ上げるのが正しい考え方です。
オーバーストライド(足を前に着きすぎる)に注意
足が腰より前に着地するほどブレーキの力が大きく、膝より前に着地するほど着地の衝撃が大きくなる傾向があります(Lieberman et al., 2015)。ケガをしたランナーは、着地のときに膝が伸び、足を体の前に着いている(オーバーストライド)傾向も見られました(Bramah et al., 2018)。
ピッチを上げると自然に歩幅が小さくなり、足を体の真下近くに着きやすくなります。
ピッチを上げる練習で、膝の痛みは良くなる?
膝のお皿まわりに痛みのあるランナー12人に、ピッチを10%上げる指導を1回行い、その後は各自で練習した研究では、3か月後に痛みと機能が改善し、週の走行距離が約14km、痛みなく走れる距離が約7km伸びました(Bramah et al., 2019)。ただし、比較するグループのない小規模な研究です。
着地の衝撃が大きいランナー30人を対象にした研究では、腕時計の合図でピッチを7.5%上げる練習を屋外で8回行うと、着地の衝撃が約18%、膝のブレーキの負担が約21〜27%減少し、効果は1か月後も続いていました(Willy et al., 2016b)。
一方で、研究のまとめでは、ピッチを上げてケガが減るか、痛みが良くなるかについては、まだ研究が少なく結論が出ていないとされています(Anderson et al., 2022; Doyle et al., 2022)。
ピッチを上げると速くなる?
ピッチを急に上げると、きつく感じたり、酸素の消費が増えたりする可能性があります(Anderson et al., 2022)。ピッチの多さと走りの効率の関係は小さく(Van Hooren et al., 2024)、練習でピッチを上げてもパフォーマンスは変わらなかったという報告もあります(Doyle et al., 2022)。6週間かけて少しずつ慣らした小規模な研究では、走りの効率は落ちませんでした(Hafer et al., 2015)。
ピッチを上げる目的は「速くなること」よりも、膝の負担を減らし、オーバーストライドを防ぐことと考えましょう。
ピッチを上げる練習のやり方
① いつものペースで走り、GPSウォッチで今のピッチを測る
② 目標は今のピッチの+5〜10%(例:160歩なら168〜176歩)
③ メトロノームアプリやウォッチのアラートに合わせて走る
④ 普段のジョグの中で練習し、2〜6週間かけて慣らす
⑤ 足を体の真下近くに着くイメージで
ピッチを上げると、太もも前(大腿直筋)や裏(ハムストリングス)の負担が少し増えることもわかっています(Lenhart et al., 2014)。急に大きく変えず、違和感があれば元に戻しながら進めましょう。
ピッチと一緒に取り組みたい筋トレ
膝の痛みを防ぐには、ピッチの調整とあわせて、股関節とひざまわりの筋トレも大切です。

スクワット、ヒップリフト、サイドレッグレイズなどを週2〜3回取り入れましょう。具体的なメニューは女性ランナーの膝の痛みの記事で紹介しています。
よくある質問
Q. ランニングのピッチは180歩が理想ですか?
トップ選手でもピッチは1分間に約155〜203歩と個人差が大きく、速さや身長でも変わります。180歩を目標にするのではなく、今のピッチから5〜10%上げるのがおすすめです。
Q. ピッチを上げると膝の負担は減りますか?
研究では、ピッチを5〜10%上げると、1歩ごとの膝の負担、特に膝のお皿の裏にかかる力が減りました。ただし、膝全体の1kmあたりの負担は変わらなかったという報告もあります。
Q. ピッチを上げると速くなりますか?
ピッチを上げてもパフォーマンスは変わらなかったという報告が多く、急に上げると逆にきつく感じることもあります。目的は膝の負担を減らすことと考えましょう。
本記事のまとめ
ピッチは、今の自分のピッチから5〜10%上げるのがポイントです。1歩ごとの膝の負担を減らし、オーバーストライドを防ぐことができます。
ORCA PERSONAL GYMでは、フルマラソン・ハーフマラソンに取り組むランナーの方の筋力トレーニングを、練習やレースの予定に合わせて完全個室・マンツーマンで指導しています。詳しくはマラソン・ランニングのパーソナルトレーニングのページをご覧ください。膝の痛みについてはランニングで膝が痛い原因、女性ランナーの膝の痛みの記事でも解説しています。
この記事が少しでもお役に立てたら幸いです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
- Anderson LM, et al. Sports Med Open. 2022;8(1):112. doi:10.1186/s40798-022-00504-0
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- Bramah C, et al. Am J Sports Med. 2019;47(14):3406-3413. doi:10.1177/0363546519879693
- Burns GT, et al. J Appl Physiol (1985). 2019;126(2):462-468. doi:10.1152/japplphysiol.00374.2018
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- Hafer JF, et al. J Sports Sci. 2015;33(7):724-731. doi:10.1080/02640414.2014.962573
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- Lieberman DE, et al. J Exp Biol. 2015;218(Pt 21):3406-3414. doi:10.1242/jeb.125500
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- Willy RW, et al. Scand J Med Sci Sports. 2016;26(2):197-205. doi:10.1111/sms.12413
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