こんにちは。
名古屋栄・久屋大通のパーソナルトレーニングジム ORCA PERSONAL GYMの 伊藤 ( @orca_coach ) です。
こちらの記事では、ランナーに多い「アキレス腱の痛み(アキレス腱障害)」の原因と、改善・予防のためのトレーニングについて、研究をもとに解説していきます。
マラソンの練習を増やしたら、走り始めにアキレス腱が痛むようになりました。
完全に休んだ方がいいのでしょうか?
以上のように、アキレス腱の痛みに悩むランナーの方のご質問にお答えします。
先に結論をお伝えすると、アキレス腱の痛みは様子を見るだけでは改善しにくく、ふくらはぎの筋トレ(負荷をかける運動)が第一の対策とされています。また、研究では痛みを確認しながらなら、ランニングを続けても回復は遅れなかったことも示されています。
アキレス腱の痛みはランナーにどれくらい多い?

ランナーのケガを調べた研究のまとめでは、アキレス腱障害の発生率は9.1〜10.9%で、ランナーの代表的なケガの一つです(Lopes et al., 2012)。
市民ランナー1929人を追跡した研究では、5.2%がアキレス腱障害を発症し、フルマラソンに登録していた人では7.4%と最も多くなっていました(Lagas et al., 2020a)。
アキレス腱を痛めやすい人の特徴
いちばん大きなリスクは、過去1年以内にアキレス腱を痛めたことがある(リスク約6倍)ことでした(Lagas et al., 2020a; Chen et al., 2024)。また、男性の方が女性より発症しやすい傾向がありました(Chen et al., 2024)。
筋力との関係では、軍の訓練生を追跡した研究で、ふくらはぎ(足首を伸ばす)の筋力が弱い人がアキレス腱を痛めやすいことがわかっています(Mahieu et al., 2006)。アキレス腱を痛めたランナーは、両脚とも、特にヒラメ筋(ふくらはぎの深い筋肉)の筋力・持久力が低い傾向も見られました(O’Neill et al., 2019)。
一方で、市民ランナーの研究では、年齢が高いことはリスクとして示されませんでした(Lagas et al., 2020a; Chen et al., 2024)。「年だから仕方ない」とあきらめる必要はありません。
「休めば治る」「様子を見る」は遠回り
75人を対象にした研究では、4か月後に「完治・大きく改善」した人は、ふくらはぎの運動をしたグループで60%、何もしなかったグループでは24%でした(Rompe et al., 2007)。29の研究をまとめた報告でも、何もしないより運動などの治療の方が改善しやすく、費用が安く害が少ない運動療法が第一の選択肢とされています(van der Vlist et al., 2021)。
アキレス腱を痛めた市民ランナーの約3割は、1年後も症状が続いていました。発症前に走る量が多かった人ほど、長引きにくい傾向がありました(Lagas et al., 2020b)。
痛みを確認しながらなら、走り続けてもよい
38人を対象にした研究では、痛みを確認しながらランニングやジャンプを続けたグループと、6週間休んだグループで、回復の早さに差はありませんでした(Silbernagel et al., 2007)。
① 走っている最中の痛みが「我慢できる軽い痛み」までにとどまる
② 翌朝、痛みやこわばりが前の日より強くなっていない
③ 痛みが強くなる場合は、距離やペースを落とす
研究で使われた細かな基準はこれとは異なるため、迷う場合は医療機関やトレーナーに相談してください。
アキレス腱の痛みを改善するふくらはぎの筋トレ
アキレス腱の痛みに対する運動は、主に次の3つの方法が研究されています。
① エキセントリック(下ろす動き)トレーニング
段差につま先で立ち、痛くない方の脚で上がり、痛い方の脚1本でゆっくりかかとを下ろします。15人のランナーを対象にした研究では、12週間の後、全員が以前のランニングに復帰できました(Alfredson et al., 1998)。もともとは1日に180回(膝を伸ばした状態と曲げた状態でそれぞれ15回×3セットを1日2回)行う方法ですが、「できる範囲の回数」で行っても、6週間後の効果は変わりませんでした(Stevens et al., 2014)。
② 重りを使ったゆっくりのカーフレイズ(HSR)
ジムでバーベルやマシンを使い、ゆっくりとかかとを上げ下げする方法です。58人を対象にした研究では、①の方法と同じくらい改善し、続けられた人の割合は92%(①は78%)と高く、満足度も高い傾向がありました(Beyer et al., 2015)。週3回が目安です。
③ 痛みを確認しながら走り続ける方法
ふくらはぎの運動を段階的に進めながら、痛みを確認して走り続ける方法です。①と比べた研究では、1年後の改善の程度に差はなく、「よくなった」と感じた人はむしろ多い結果でした(Habets et al., 2021)。
どの方法でも、改善は2週目ごろから始まり、12週ごろにピークになる傾向があります(Murphy et al., 2018)。最低でも12週間は続ける前提で取り組みましょう。
予防のためにやっておきたいこと
予防効果を直接確かめた研究は多くありませんが、アキレス腱を痛める人はふくらはぎの筋力が低い傾向があるため、膝を伸ばした状態と曲げた状態のカーフレイズを、日頃のトレーニングに入れておくのがおすすめです(Mahieu et al., 2006; O’Neill et al., 2019)。特に、過去に痛めたことがある人は、ふくらはぎの強化と走る量の管理を優先しましょう。
なお、アキレス腱のかかと側(付け根)の痛みと、少し上の部分の痛みでは、適した運動が異なる場合があります。腫れが強い、急に「バチッ」と音がした、歩けないほど痛いといった場合は、すぐに整形外科を受診してください。
① 様子を見るより、ふくらはぎの運動を始める
② 痛みを確認しながら走るのはOK
③ 方法は続けやすいものを選び、12週間は続ける
④ 過去に痛めた人は、予防のカーフレイズを習慣に
よくある質問
Q. アキレス腱が痛いときは走ってはいけませんか?
研究では、痛みを確認しながらランニングを続けても、休んだ場合と回復の早さに差はありませんでした。痛みが強くなる場合は距離やペースを落としましょう。
Q. アキレス腱の痛みはどれくらいで治りますか?
運動による改善は2週目ごろから始まり、12週ごろにピークになる傾向があります。最低でも12週間は続ける前提で取り組みましょう。
Q. 40代・50代だとアキレス腱を痛めやすいですか?
市民ランナーの研究では、年齢が高いことはリスクとして示されませんでした。過去に痛めたことがあることが、最も大きなリスクでした。
本記事のまとめ
アキレス腱の痛みは、休むよりも、ふくらはぎの運動で改善していくことが基本です。痛みを確認しながら、無理のない範囲で走り続けましょう。
ORCA PERSONAL GYMでは、フルマラソン・ハーフマラソンに取り組むランナーの方の筋力トレーニングを、練習やレースの予定に合わせて完全個室・マンツーマンで指導しています。詳しくはマラソン・ランニングのパーソナルトレーニングのページをご覧ください。足の裏の痛みについては足底筋膜炎の原因と改善方法、40代以降のランナーの筋トレについては40代・50代ランナーの筋トレの記事でも解説しています。
この記事が少しでもお役に立てたら幸いです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
- Alfredson H, et al. Am J Sports Med. 1998;26(3):360-366. doi:10.1177/03635465980260030301
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